山崎ナオコーラさん連載【未来の源氏物語】第3回「『ロリコン』の読み方」#3

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*イラストも筆者

平安時代の昔から現代まで、多くの人に愛されてきた『源氏物語』。

しかし、古代日本の価値観を背景に書かれた物語は、身分、見た目や性別による偏見が描かれ、

多様性を重んじる時代の価値観から見ると違和感を覚えることもあるでしょう。

そんな『源氏物語』を今の視点で楽しむには? 新たな「読み」の可能性を考えます。

 

 

第3回

「『ロリコン』の読み方


このシーンは、相手は子どもですが、立派な「垣間見」ですから、恋愛描写として読んでいいでしょう。

子どもに対して「かわいいね」という視線を投げる程度のことは、現代でもありますし、違和感はありません。

でも、性的魅力のあるなしの評価を投げるとなると多くの現代人が「あれ?」と感じるでしょう。

しかも、ここでは、「好きな人と顔が似ている」という目で子どもを見ています。

 

「ねびゆかむさまゆかしき人(大人になるのが楽しみな人)」は、性的魅力を持つようになるのが楽しみ、と受け取れます。

現時点での性的評価ではなく大人になったときの予想像なのでまだましかもしれませんが、それでも、「この子どもが大人になったら、好きな人の代わりになるかも」と考えるのって……、ううむ、どうなのでしょう。人形みたいに見ているとも感じられます。

 

子どもを見たときに、「社会的意義のある仕事をする人になるかもしれない」「想定外の成長をするかもしれない」「とはいえ、早く大人になろうとせず、子ども時代を楽しんで欲しい」といった辺りの視線を投げるのが現代を生きる人の一般的な感覚ではないでしょうか?

やはり、ここは、「平安時代ならではの視線」ということになると思います。

 

ついでに、祖母が「早くしっかりしてね」といった視線をしきりに投げるところにもちょっと引っ掛かりを覚えます。

分別を持って欲しい、ということだとは思います。

ただ、現代とは違い、子どもの期間をゆっくり過ごせない時代なのだろう、と推測できます。

この時代、女性という性別を持つ人は誰かに見初められてやっと経済的に安定するので、親や親族の年長者が少女に対して「性的な成熟」を早期に求めることがよくありました。

 

子ども本人の経済安定だけでなく、家の発展につながることもあるため、少女を大人と見なすことは盛んに行われました。

この祖母は、このシーンのあとの光源氏からの「引き取りたい」という申し出を、まだ妻になるような年齢ではない、と最初は断っているので、「性的な成熟」を早期に求めているわけではないでしょう。

 

でも、父親や夫がいない環境下の少女は生きていくのが難しい、という考えがあって、しきりに心配しているのだと思われます。

その後、結局のところ、紫の上は光源氏に育てられ、十四歳ぐらいのときに性行為を強要されて結婚します。十四歳は子どもですね。

 

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